
適応障害の就労移行支援はどう選ぶ?事業所のタイプと選び方
適応障害で今までのように働けなくなった場合、就労移行支援に通いながら、次の就職を目指すという選択肢があります。
就労移行支援であれば、メンタル・体調管理をしながら、スキルを習得し、支援員と一緒に就職に向けたステップを進めることができるでしょう。
また、ストレスコーピングや就職後の定着支援により、適応障害で心配される再発のリスクも減らしていけます。
こちらの記事では、就労移行支援のタイプと選び方について分かりやすく解説いたします。
就労移行支援事業所には4つのタイプがある

「就労移行支援」は、障害や難病を抱える人が、一般企業への就職を目指して利用するサービスです。
体調の安定・職業訓練・就職活動・就労後の定着支援などのサポートを実施します。[※1]
| 就労移行支援 | |
|---|---|
| 目的 | 一般就労を目指してスキルを身につける |
| 対象者 | 障害や難病のある人一般就労を希望する人 |
| 利用期間 | 原則2年以内 |
| 年齢制限 | 原則18歳以上65歳未満 |
| 利用料 | 世帯収入による |
厚生労働省によると、令和7年の就労移行支援の利用人数は38,289人にものぼります。多くの人が利用しているサービスです。[※2]
なお、就労移行支援の利用料金は、世帯の収入によって自己負担額が異なります。事前に確認しておくと安心です。[※3]
| 就労移行支援の利用料 | |
|---|---|
| 世帯の収入状況 | 自己負担上限金額(月額) |
| 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 市町村民税課税世帯 (収入が約670万円以下) | 9,300円 |
| 上記以外 | 37,200円 |
それぞれの就労移行支援事業所は、支援内容やカリキュラムの傾向によって、大きく4つのタイプに分類できます。
自分のに目的に合うタイプをの事業所を選ぶことで、スムーズな就職を目指せるでしょう。
| ① メンタル・生活支援型 (基盤づくり重視) | 【重点を置くこと】 体調の安定・生活リズムの定着・心のセルフケア 【向いている人】 離職期間が長い人 毎日通える状態をつくりたい人 |
| ② 職業訓練型 (スキル習得重視) | 【重点を置くこと】 実務スキル習得や資格取得 【向いている人】 体調が安定している人 希望職種に必要なスキルを身につけたい人 |
| ③ 就職活動・企業連携型 (実践・マッチング重視) | 【重点を置くこと】 就職活動対策・職場実習・企業との調整 【向いている人】 働く準備が整っている人 希望職種への就職を目指す人 早期就職を目指す人 |
| ④ 総合支援型 (バランス重視) | 【重点を置くこと】 生活面のサポート・スキル訓練・就職活動 【向いている人】 自分に必要な支援が分からない人 就職に向けて総合的に準備をしたい人 |
それぞれのタイプの事業所について、自分に合っているか確認していきましょう。
[※1]厚生労働省「就労移行支援事業」
[※2]厚生労働省「障害福祉サービス等の最近の動向(令和7年6月まで)」p33
[※3]厚生労働省「障害者の利用者負担」
① メンタル・生活支援型

「メンタル・生活支援型」の事業所では、体調の安定、生活リズムの定着、ストレスコーピング、心のセルフケアを優先して行います。
「メンタル・生活支援型」の就労移行支援事業所は、「すぐに就職活動を始めるよりも、まずは体調・生活の安定・ストレスの対処などから取り組みたい」という人に向いています。
ストレスコーピングは、ストレスに対する対処法や工夫のことです。[※4]
ストレスの原因を減らしたり、受け止め方を変えたり、気分を変えたりする方法があります。
コーピングスキルを伸ばすことは、適応障害の再発を防ぐためにも有効です。
適応障害によって離職し、「再就職したいが、心身の調子に不安がある」という人は、メンタル・生活支援型の就労移行支援に通うことで、心身を整えながら就職へ向けて無理なく準備をしていけるでしょう。
【メンタル・生活支援型が向いている人】
- 生活リズムが乱れていて、毎日決まった時間に通うのが難しい
- ストレスコーピングや体調管理に不安がある
- 復職のために、焦らず体力・メンタルを整えたい
- 再就職後の再発を防ぐ対策をしたい
【「メンタルケア・生活支援型」事業所を探すには?】
次のポイントを確認してみましょう。
□ 公認心理師・臨床心理士が在籍している
□ 生活リズムを整えるところから支援を受けられる
□ 体調に合わせて通所日数・時間を調整できる
□ グループワークのカリキュラムがある
□ 必要なときに、いつでも個別面談ができる
体調の安定→自己理解→ストレス対処→就職準備→定着まで、段階的に支援してもらえると安心です。
② 職業訓練型

「職業訓練型」の就労移行支援は、実務で使えるスキルの習得に特化した事業所です。
オフィスワーク、クリエイティブ系などへの再就職を目指すプログラムが提供されています。
事業所により、取り組む分野は異なります。
主に、次のようなスキル習得のためのカリキュラムが用意されているでしょう。
● オフィスワーク
ExcelWord・Word・PowerPoint の活用MOS資格対策 経理・会計ソフト(弥生会計など)の操作
●IT・Web系
プログラミング(HTML/CSS、JavaScript、PHP、Python)、 Webサイト制作、システム開発の基礎・実践ITパスポート、基本情報技術者試験などの資格対策
●デザイン系
Illustrator、Photoshop 、Webデザイン、DTPデザイン 動画編集など
体調がある程度安定していて、新しいことを学ぶエネルギーがある人であれば、専門スキルを身につけられる就労移行支援を探してみてもよいでしょう。
職業訓練型の就労移行支援が向いているのは次のような人です。
【職業訓練型が向いている人】
- 安定して通える人
- 専門スキルや資格を身につけたい人
- 前職とは異なる職種・働き方を目指している人
- オフィスワーク、クリエイティブ職などを希望する人
- 就職活動に役立つ資格やポートフォリオがほしい人
職業訓練型の就労移行支援を利用することで、就職活動で、資格やポートフォリオをアピールできるようになるでしょう。
【「職業訓練型」事業所を探すには?】
次のポイントを確認してみましょう。
□ 専門スキルの学習カリキュラムがある
□ 専門スキルの指導ができるスタッフがいる
□ 実務に役立つ課題(サイト制作など)がある
□ 資格取得のカリキュラムがある
□ スキルを生かした就職実績がある
ただし、このタイプ事業所は、慎重に検討する必要があります。
生活リズムやストレス対処が課題になっている人には、スキル習得のために継続して通うのは、負荷が高いかもしれません。また、ルーティンワークを希望している人には、専門スキルの訓練が負担になってしまう場合があります。
適応障害の人の場合は、訓練内容の充実だけではなく、体調に合わせて訓練量や通所ペースを調整できるかどうかも確認するとよいでしょう。
③ 就職活動・企業連携型

「就職活動・企業連携型」の就労移行支援事業所は、「短期間での就職」と「適切な企業へのマッチング」に力を入れています。
ある程度就職するための準備が整ってはいるが、サポートを受けながら自分に合う職場を探したい人に向いているでしょう。
【就職活動・企業連携型が向いている人】
- 生活リズムや心身が安定している人
- すでに職務経験やスキルがある人
- 訓練よりも就職活動のサポートを求めている人
- インターンを通じて、「自分に合う職場か」確かめてから就職したい人
- できるだけ早く再就職したい人
就職準備が整っている人であれば、半年~1年程度で、早期の就職を目指すこともできます。ただし、利用期間には個人差があり、就労移行支援全体では平均約1年4か月というデータがあります。
【「就職活動・企業連携型」事業所を探すには?】
次のポイントを確認してみましょう。
□ 企業見学やインターンの機会が豊富にある
□ 非公開求人をもっている
□ 履歴書・職務経歴などを個別に添削してくれる
□ 模擬面接など実践的なトレーニングが充実している
□ 利用者に合わせて企業との調整を行ってくれる
企業との連携が豊富であることや、就職活動をより実践的にサポートしてくれるかを確認するとよいでしょう。
ただし、体調を安定させたい人や、時間をかけてスキルを身につけたい人には、ペースが速く感じられるかもしれないため、注意が必要です。
[※5]厚生労働省「第 15 回 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム議事次第」p18
④ 総合支援型

総合支援型の就労移行支援事業所は、生活リズム改善・自己理解・スキル訓練・就職活動・定着支援を、トータルでサポートする事業所です。
通所しながら、体調を安定させ、どんな職種が自分に合うか探していきたい人に向いているでしょう。
【総合支援型が向いている人】
- 就職に向けて何から始めたらよいか分からない人
- 自分の課題がまだ整理できていない人
- 生活リズムや体調を整えたい人
- セルフケアと仕事のスキルの両方を身につけたい人
- 通所しながら自分に合った仕事や働き方を見つけたい人
- 生活面と職業面の両方に不安がある人
- 就職した後も相談したい人
まずは働く土台を整えたい人、幅広い就職の選択肢をもちたい人は、総合支援型を選ぶとよいでしょう。
【「総合支援型」事業所を探すには?】
次のポイントを確認してみましょう。
□ 生活支援・職業訓練・就職活動をトータルでサポートしてくれる
□ 専門分野ごとのスタッフがきちんと在籍している
□ 一律的な支援ではなく個別支援プログラムが充実している
□ 幅広い障害のある方の就職実績がある
□ さまざまな職業の就職実績がある
自分が就職活動を始められる状態か判断がつかず、どの支援を重視すべきか分からないという場合は、まず、総合支援型の就労移行支援を選ぶとよいでしょう。
希望に合わせて事業所のタイプを選ぶ
適応障害の症状や体調に合わせて事業所のタイプを選ぶのも、おすすめの選び方です。
自分の状態に合わない事業所を選んでしまうと、十分なサポートを得られなかったり、体調を崩してしまったりするかもしれません。
現在の状態と目的に合わせて、最適な事業所を選びましょう。
| 現在の状態 | おすすめの事業所タイプ |
|---|---|
| 体調や生活リズムが安定していない | メンタル・生活支援型 |
| 前職とは異なる仕事に転職したい | 職業訓練型 |
| できるだけ早く再就職したい | 就職活動・企業連携型 |
| 体調は安定しているが、再発が不安 | メンタル・生活支援型 総合支援型 |
| 自分に必要な支援がまだわからない | 総合支援型 |
体調や生活リズムが安定していない
おすすめタイプ:メンタル・生活支援型
朝起きるのがつらい、気分の波が大きい、毎日通所するのは難しいという時期には、生活やメンタルの安定に力を入れている「メンタル・生活支援型」事業所が合っているでしょう。
- 生活リズムを整えるところから始められる
- 体調に合わせて通所できる
- 体調管理の方法を身につ着けられる
- セルフケアを学べる
週2~3日、短時間の通所からスタートできます。体調不良にも対応して、ゆっくりと復帰をサポートしてくれるでしょう。
前職とは異なる仕事に転職したい
おすすめ:職業訓練型
適応障害の原因が前職の職種にある場合、前職とは異なる仕事を希望することもあるでしょう。
未経験の仕事に必要なスキルを身につけるのであれば、「職業訓練型」事業所が向いているでしょう。
職業訓練型の就労移行支援事業所であれば、PCスキル、IT、デザインなど、希望する職種に必要なスキルを学べます。
訓練を通して、仕事との相性も確認できるでしょう。
- 希望する職種のスキルを学べる
- 訓練で仕事のイメージをつかめる
- 資格取得やポートフォリオ作成をサポートしてもらえる
職業訓練型を選ぶ際は、希望する職種への就職実績も確認することも大切です。また、体調に無理なく通えるかもよく考えましょう。
できるだけ早く再就職したい
おすすめ:就職活動・企業連携型
できるだけ早く再就職したい場合、「就職活動・企業連携型」事業所がおすすめです。
提携企業でのインターンシップ、独自の非公開求人の案内など、就職のための実践的なプログラムが用意されています。
- 求人探しをすぐに始めやすい
- 応募書類の作成や面接対策のサポートがある
- 企業見学やインターンの機会がある
- 企業とのマッチングを支援してもらえる
半年~1年程度のスピード就職を目指せるのが魅力です。
また、インターンシップにより、職場環境を確かめてから就職することで、ミスマッチを防ぐこともできるでしょう。
ただし、「利用すれば早く就職できる」とは限らないため、焦らずに自分の体調に合わせて考えましょう。
体調は安定しているが、再発が不安
おすすめ:メンタル・生活支援型、総合支援型
日常生活や通所はこなせるものの、「ストレスで再発しないか」という不安が強い場合には、「メンタル・生活支援型」「総合支援型」事業所を選ぶとよいでしょう。
ストレスコーピングを学び、体調が崩れそうなときの対応を考えられます。
また、ナビゲーションブックを作成することで、再発防止のためのセルフケア方法や、就職先に求める配慮について整理できるでしょう。
- ストレスの原因や環境を整理できる
- ストレス対処法を学べる
- 自分に合った働き方や職場環境を考えられる
- 職場で必要な配慮を整理できる
再発の不安に備え、無理なく働くための準備ができます。
自分に必要な支援がまだわからない
おすすめ:総合支援型
自分に必要なサポートが整理できていない場合には、「総合支援型」事業所を選ぶのがよいでしょう。
総合支援型であれば、生活リズムの定着、ストレスコーピング、PC操作、就職活動対策まで、幅広いプログラムをバランスよく提供してくれるでしょう。
- 生活面から就職活動まで幅広い支援を受けられる
- 支援員と一緒に自分の課題を整理できる
- 自分の状況に合わせて取り組む内容を選びやすい
- 就職準備から就職後の定着まで段階的に支援を受けられる
さまざまなプログラムを体験しながら、自分に合う職種をスタッフと一緒に発見していけます。
「何から始めればよいか分からない」と思ったら、総合支援型を見学してみましょう。
目指す働き方から就労移行支援事業所を絞り込む
就労移行支援事業所には、それぞれ得意とする分野があります。
自分がどのような働き方をしたいのか考え、それに合う事業所を選ぶ方法もあります。
| 目指す働き方 | おすすめの事業所タイプ |
|---|---|
| 未経験の職種へ転職したい | 職業訓練型 |
| 一般雇用で働きたい | 就職活動・企業連携型 |
| 障害者雇用で安定して働きたい | 総合支援型 |
| 在宅勤務やIT職を目指したい | 職業訓練型 |
| 前職と同じ職種に復帰したい | メンタル・生活支援型 |
未経験の職種へ転職したい
おすすめ:職業訓練型
未経験の職種に挑戦したいなら、基礎からスキルを身につけられる「職業訓練型」事業所の就労移行支援がおすすめです。
希望する職種に必要なスキルを学び、自分に合う仕事かどうかを核にしてから就職を目指せます。
【おすすめの理由】
- 必要なスキルを基礎から学べる
- 実務トレーニングや資格取得のサポートがある
- 自分に合う仕事か確認できる
- スキル・資格・ポートフォリオを転職活動でアピールできる
自分がどの分野に進みたいのか考え、その分野に強い事業所を選びましょう。
一般雇用で働きたい
おすすめ:就職活動・企業連携型
一般雇用でのオープン就職・クローズ就職を目指す場合、就職選考を突破するためのサポートが手厚い「就職活動・企業連携型」事業所がおすすめです。
求人探しから応募のサポート、企業との調整まで、就職活動に直結した支援を受けやすいでしょう。
【おすすめの理由】
- 一般雇用の求人探しをサポートしてもらえる
- 応募書類や面接の対策が手厚い
- 企業との連携で、仕事内容や働き方を確認できる
- 就職後も定着のための支援を受けられる
適応障害の人の場合、企業とのマッチングや、定着支援に力を入れる事業所を選ぶと安心でしょう。
障害者雇用で安定して働きたい
おすすめ:総合支援型
障害者雇用で、配慮を受けながら安定して働きたい場合は、「総合支援型」事業所がおすすめです。
自己理解、必要な配慮の整理、職業訓練、就職活動、定着まで、幅広く支援を受けられるためです。
【おすすめの理由】
- 自分の特性や得意・不得意を整理できる
- 職場で必要な配慮を明確にでできる
- 仕事のスキルを身につけられる
- 自分に合った職場探しをサポートしてもらえる
- 就職後も安定して働くための支援を受けられる
長く安定して働けるようになるために、バランスよく全体をサポートしてくれる事業所を選びましょう。
在宅勤務やIT職を目指したい
おすすめ:職業訓練型
「通勤の負担を減らして在宅で働きたい」「プログラミングやWebデザインのスキルを磨きたい」という場合、専門に特化した「職業訓練型」事業所がおすすめです。
【おすすめの理由】
- プログラミングやWeb制作などの専門スキルを学べる
- PCスキルの実践的な訓練を受けられる
- 資格取得やポートフォリオ作成の支援を受けられる
- 在宅勤務を想定した訓練を行うっ事業所もある
- IT職への就職に強い事業所もある
専門講師による指導や、最新の学習環境が整った事業所を探してみましょう。
また、在宅勤務を希望する場合、自分で仕事の進捗を管理する力、チャットやオンラインミーディングで報告・相談する力なども求められます。
在宅勤務を想定した訓練や就職実績があるかも確認してみましょう。
前職と同じ職種に復帰したい
おすすめ:メンタル・生活支援型
前職と同じ職種に復帰するのであれば、一から職業訓練を受ける必要はないでしょう。
体調管理やストレスコーピングに力を入れた「メンタル・生活支援型」事業所を選び、適応障害の再発を防ぐことに注力するとよいでしょう。
【メンタル・生活支援型 おすすめの理由】
- 生活リズム・体調を整えられる
- 前職で負担になったことを振り返って対策できる
- ストレス対処法を身につけられる
- 自分に必要な職場の配慮を整理できる
- 再就職後に無理しないためのセルフケアを学べる
メンタル・生活支援型は、「同じ仕事はできると思うが、また体調を崩さないか不安」という人に向いています。
れば、支援を受けながら、早期の就職も目指していけるでしょう。
適応障害の就労移行支援は「自分の課題」と「目指す働き方」に合う事業所を選ぶ
就労移行支援事業所は、知名度や近さだけで選ぶのはやめましょう。
思っていたようなサポートを受けられず、就職につなげることが難しくなってしまいます。
適応障害からの復職を目指すのであれば、「自分の課題」と「目指す働き方」を考えて、適切なサポートを提供してくれる就労支援事業所を選びましょう。
記事でご紹介した事業所のタイプを選んだら、見学をして、実際に通えるかどうかを確認すると安心です。
必要な支援を提供している就労支援事業所を選ぶことで、心身を安定させ、自分に合う職場で働くことを目指していけるでしょう。








