【適応障害】仕事が怖い…続ける・辞めるの判断と具体的な対処方法
近年メンタルヘルスの重要性が理解されるようになりましたが、それは現代社会がストレス社会であることの裏返しでもあります。実際、ストレスが原因となる「適応障害」の発症数は増加しています。原因として多く上げられるのが仕事上のストレスです。
この記事では、適応障害の方の仕事の悩みについてまとめました。仕事にどんな影響が出るか、どのように対処したらいいか解説します。適応障害で仕事について悩んでいる方は参考にしてみてください。
仕事のせいでなることも!適応障害とは
「適応障害」は、ストレスが原因で自分の置かれた環境に適応することができなくなる病気です。一度発症すると、不安感や抑うつ気分・不登校や出勤拒否・対人トラブルが起こるなど、社会生活に支障をきたしてしまいます。
生活環境の変化に対応しようとしても思い通りにならないストレスが原因になります。はっきりしたきっかけとなる出来事や変化があるのが特徴です。きっかけとなることが起こってから1か月以内に発症するとされています。
身近な人の死別や離婚などプライベートが原因で発症することもありますが、職場の問題や変化が原因になることもあります。例としては、就職・転職・異動など仕事上の環境の変化、職場の人間関係やパワハラ、仕事上のプレッシャーなどが挙げられます。
適応障害の症状と仕事への影響
適応障害の症状には、情緒的な症状と身体的な症状とがあります。情緒的な症状としては、不安・抑うつ・無気力・思考力や集中力の低下・イライラなどが挙げられます。身体的な症状としては、倦怠感・不眠・涙が止まらないなどがあります。
これらの症状により、仕事に以下のような影響が出ることがあります。
- 仕事のミスが増える
- 欠勤・無断欠勤するようになる
- 人間関係のトラブルが起こってしまう
以下、仕事への影響について1つずつ見ていきましょう。
影響|仕事のミスが増える
まず初めに挙げられるのは、それまでにはなかったような仕事のミスが増えることです。入力ミスなどのケアレスミスが多くなったり、場合によっては大きなミスを犯してしまうこともあります。
またミスを気にするあまり悪循環に陥ってしまうこともあります。自分のミスで落ち込んだり気持ちの切り替えができなくなったりしてしまい、集中力が下がってさらにミスしてしまうのです。
ミスが増える原因としては、抑うつ・思考力や集中力の低下・不安などが挙げられます。
影響|欠勤・無断欠勤するようになる
また、仕事や学校を欠勤したり欠席したりすることが増えます。ときには休む連絡をすることが苦痛になってしまい、無断で欠勤・欠席することもあります。
適応障害の症状として、出勤するだけで動悸や息苦しさを感じたり、コミュニケーションを避けたりするようになる場合があります。そのせいで、外出や人に会うことが面倒な気分になってしまうことが原因です。
影響|人間関係のトラブルが起こってしまう
適応障害が原因となって、人間関係のトラブルが起きることがあります。適応障害になると不安や焦りから感情の起伏が激しくなり、情緒が不安定になることがあります。それにより暴言を吐いたり口論になりやすくなったりするなど、攻撃的になる場合もあるためです。
そのほか、危険運転などの形で攻撃性が現れることもあります。
続ける?辞める?判断の基準
適応障害の人が仕事を続けるか辞めるか判断する基準は、ストレスの原因となっていることに対処できるかどうか、解決できるかどうかです。
適応障害はストレスが原因で、発症の原因となる出来事もはっきりしています。発症の原因を解消できるのなら、今の病状がひどくてしばらくは働くことができなくても、一定の時間が経ったときにはもとの仕事を続けられる可能性があります。
仕事が原因の場合は、会社が休職や異動などに応じてくれるかどうかで判断することになります。たとえばいわゆるブラック企業であれば、改善・解決は難しいかもしれません。その場合は退職した方がよいという判断になります。
適応障害で仕事を続けるときのポイント
適応障害で仕事を続けるためには、いくつかポイントがあります。次に、適応障害で仕事を続けるときのポイントについてまとめます。具体的には次の5点があります。
- ストレスの原因をはっきりさせる
- ストレスの原因を遠ざける
- ストレスの発散方法を見つける
- カウンセリング・診察に通う
- いったん休職して回復を待つ
1つずつ具体的に見ていきましょう。
ポイント|ストレスの原因をはっきりさせる
まず1つ目のポイントは、ストレスの原因をはっきりさせることです。原因を特定することが、同じ職場で仕事を続ける大前提と行ってもよいでしょう。原因が職場にある場合はなおさらです。
ストレスの原因を特定できれば、取るべき対応がおのずと決まります。とくに適応障害は、はっきりとしたストレスの原因があるのが特徴です。その原因を突き止めることが解決の第一歩となります。
ポイント|ストレスの原因を遠ざける
ストレスの原因がわかったら、その原因を解消したり、その原因とかかわらずに済む状況を作ったりします。ハラスメントや多すぎる業務量など、職場の人間関係や業務内容が原因の場合もあります。そのような場合は、異動や調整をしたり原因となった人物の行動を改善させたりすることによって問題を解決します。
アメリカ精神医学会の適応障害の定義では、「ストレスの原因がなくなった場合、症状はそれから6か月以上は続かない」とされています。原因を遠ざけることができれば回復します。
ポイント|ストレスの発散方法を見つける
適応障害はストレスが深くかかわる病気なので、ストレス発散することも有効です。休憩時間と勤務時間や、仕事の日と休日のメリハリを付けられるようにします。
休みの日に好きなことに没頭したり、休憩時間に気分転換したりできる時間を作ります。そのほか、不規則な生活はメンタルヘルスに悪影響とされます。規則正しい生活リズムや健康的な食生活も効果があります。
ポイント|カウンセリング・診察に通う
社会生活を保ち仕事を続けるためには、1人で抱え込まずに人に相談することも大切です。とくにカウンセリングや診察は、客観的・専門的なアドバイスを得ることができます。適応障害の回復には精神療法も有効なので、ぜひ続けましょう。
職場の人間関係が原因の場合は、上司や同僚などに相談しにくいケースもあるでしょう。そのような場合も医師やカウンセラーに相談できると安心です。
ポイント|いったん休職して回復を待つ
ストレスの原因を取り除くことができない場合は、いったん休職しましょう。仕事がストレスの場合は、休むことが原因から離れることにつながります。すでに述べたように、原因から離れることができれば回復します。
無理していると、うつ病に移行する場合もあります。移行すると回復に余計に時間がかかる可能性があります。悪化を防ぐという意味でも、無理はしないようにしましょう。
適応障害で仕事を辞めるときの注意点
職場に原因があって問題を解決できないときや取り除ける見通しが立たないときは、退職するしかありません。原因を取り除けないのなら、原因から離れるためにはそれしかないからです。次に、適応障害で仕事を辞めるときの注意点についてまとめます。具体的には次の5つがあります。
- まずは休職を検討する
- 経済状況に応じてお金の対策をする
- 退職は「逃げ」ではないと理解する
- 退職できるか心配なときは準備する
- タイミングを見て仕事復帰の準備を始める
1つずつ見ていきましょう。
注意点|まずは休職を検討する
辞める決断をする前に、もう一度だけ退職せずに休職で解決できないか検討しましょう。判断力が鈍っていて、退職以外の選択肢が見えなくなっている可能性もあります。1人で解決しようとせず、人に相談してみても客観的な意見を聞くことができます。
注意点|経済状況に応じてお金の対策をする
辞めるしかない場合は、まずお金の問題にどう対策するかを考えて備えましょう。
退職すると給料が得られなくなる期間ができます。貯金や家族の収入などの使えるお金と、平均的な生活費・治療費などの出費額を確認します。辞めてもどうにかできるか、どのぐらいの期間生活できるかなどを計算してみましょう。
また、公的な経済支援が得られる場合もあります。そういった支援を利用できないか条件をチェックしましょう。たとえば、健康保険に入っていて休職する場合は傷病手当がもらえます。障害認定が受けられるのなら、障害者年金がもらえます。パワハラが原因なら労災認定が受けられる可能性もあります。
その他、医療費負担を減らせる自立支援医療制度や、失業手当や生活保護など治療以外の面での支援もあります。障害者手帳を取得すれば、指定のサービスが無料で受けられるようになるので生活費を節約できます。
注意点|退職は「逃げ」ではないと理解する
退職は「逃げ」ではありません。逃げていると批判してくる人がいるかもしれませんが、聞く耳を持つ必要はありません。
対処しようとしたのに、原因を取り除くことができなかったために退職するのです。逃げでも甘えでもありません。いくつかある選択肢の1つです。
性格などとの関係もありますが、病気を誘発する原因となったのは環境の方だとも言えます。まずは治すことを最優先で考えて、余計な意見は遮断してしまいましょう。
注意点|退職できるか心配なときは準備する
退職の希望が受け入れられるか心配な場合は、スムーズに退職するための準備をしましょう。職場が人手不足だったりすると、場合によっては引き止められるかもしれないと不安に思うかもしれません。しかし大丈夫です。働く人には、退職を含む職業選択の自由が認められています。
しっかり説明・証明する準備や、辞めるための準備を進めます。医師に、病状を証明する診断書を書いてもらいましょう。相手が聞き入れない可能性があるなら、退職代行を依頼するのも選択肢の1つです。
注意点|タイミングを見て仕事復帰の準備を始める
休養を取って医師からOKの診断を受けたら、仕事復帰の準備を始めましょう。退職して休養を取れば、ほとんどの場合は症状が収まり回復します。
同じ思いを繰り返さなくて済むように、自分に合った業種や職種を検討しましょう。就労移行支援などの施設ではスキルの訓練をすることができます。地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターでは、自己理解などメンタル面の相談が可能です。
準備ができたら、あるいは訓練しながら、ハローワークや求人サイトで仕事を探しましょう。障害者専門の求人サイトや転職エージェントもあります。就労移行支援事業所では、仕事探しや採用を勝ち取るための相談も行っています。
チャンスを増やすためには、一般雇用にこだわらず障害者枠や特例子会社という選択肢もあります。障害者枠は一般企業や地方自治体が障害者向けに用意しているポストです。特例子会社は、大手企業などが障害者の雇用のために設立した子会社のことです。いずれも障害者手帳が必要となりますが、環境が整っていて配慮を受けながら働くことができます。
まとめ
適応障害はストレスが原因で発症し、社会生活にも悪影響を及ぼしてしまう障害です。しかし原因さえ見つけることができれば、どう対処するかも決まります。不安に思うのも無理はありませんが、決して治らない病気ではありません。むしろ治しやすい病気だとも言えます。
職場に原因があるなら、原因を取り除く方法を考えましょう。それができない場合は退職して休養しましょう。回復したら、今度は自分に合った仕事を見つけてください。そうして、新しい第一歩を踏み出しましょう。