社会不安障害に向いている仕事とは?職種・環境・雇用形態に分けて解説
「社会不安障害」という障害があります。何種類かある不安障害のうちの1つで、人と接する場面で不安や恐怖を感じてしまうのが特徴です。「社会不安症」「社交不安障害」とも呼ばれ、10~20代など若い世代に多く見られます。そのため、正社員としてだけでなくアルバイトとして働く際も障壁になってしまう場合があります。
この記事では、アルバイト・社員を問わず社会不安障害の人に向いている仕事について、職種・職場環境・雇用形態に分けて解説します。人に接するのが怖くて仕事探しがうまく行かない人はぜひ参考にしてみてください。
社会不安障害の人の仕事の悩み
社会不安障害の人は、仕事においてもプライベートにおいても人との関わりで悩むことが多くなります。社会不安障害というのは、人から注目されたり人前で失敗したりすること、人に嫌われたりすることに対する恐怖や不安があるからです。以前は「対人恐怖」「赤面恐怖」などと呼ばれていた障害です。
具体的な症状には、不安や恐怖・緊張を感じるといったメンタル面の例に加えて、動悸・赤面・発汗など身体的なものもあります。
「不安障害」には、社会不安障害のほか「全般性不安障害」「強迫性障害」などがあります。社会不安障害は対人関係に関わるという点が大きな特徴ですが、「全般性不安障害」は特別な理由がないのに漠然とした不安を感じる障害、「強迫性障害」は自分でも不合理と分かっているのに決まった行動を取らずにはいられない障害です。
社会不安障害の人が仕事で困りがちなこと・悩むことには、次のようなことがあります。
- 会議や取引先など人前での発言
- プレゼンテーション
- 電話応対
- 接客
上記に限らず、人の注目を集めたり人とやり取りしたりするときに不安や恐怖を感じてしまいます。そのせいで他人を避けてしまいがちになります。
社会不安障害の人に向いている仕事とは
社会不安障害は人に接することや人前で失敗することに恐怖心や緊張感を感じるため、逆にそのような可能性が低い仕事が向いています。落ち着いて働けるだけでなく、能力も発揮できるでしょう。具体的には次のような特徴がある仕事や職場が向いています。
- 人とのやり取りが少ない
- 仕事の量が安定している
- 突発的な対応が不要
- 自分のペースでできる
上記のような仕事なら不安になる要素が少ないからです。
社会不安障害の人に向いている職種
次に、社会不安障害の人に向いている具体的な職種について解説します。上記の特徴すべてに当てはまる仕事はなかなかありません。そのためそれぞれの仕事について、自分が重視したいポイントがどうか知る必要があります。
そこで目安として、職種ごとに上記で挙げた特徴について3段階で評価します。自分の得意なこと・苦手なことに注目して、仕事選びの参考にしてください。
向いている職種|デザイナー(Webデザイナー・グラフィックデザイナー)
- やり取り…………★★
- 仕事の量…………★★★
- 突発的な対応……★★
- 自分のペース……★★★
デザイナーは、注文内容に合わせて専用のソフトでデザインをする仕事です。WebデザイナーはWebサイトのデザイン、グラフィックデザイナーはロゴなどのデザインを行います。
デザインのスキルや興味があればぴったりの仕事でしょう。在宅やフリーランスでも働くことができ、フリーランスなら仕事の量やペース配分を調節できます。
ただしクライアントなどに確認しながら作業を進めるため、やり取りが必要となる場面もあります。また完全に自分の思い通りにできるわけではありません。注文内容に合わせたり納期を守ったりする必要があるからです。
向いている職種|Webライター
- やり取り…………★★★
- 仕事の量…………★★★
- 突発的な対応……★★
- 自分のペース……★★
Webライターは、指定されたテーマについてWebサイト用の記事を作成するのが仕事です。作成する記事は自分の得意分野だけとは限らず、リサーチして記事作成する場合もあります。
在宅のフリーランスが多く、むしろ正社員は少ないかもしれません。フリーランスなら、仕事の量を調節したりペース配分を調節したりすることも可能です。やり取りもチャットツールやメールが中心で、直接顔を合わせることはほとんどありません。
ただし納期があり、期限までに納品しなくてはなりません。納期までが短く、スピーディーな対応が求められる場合もあります。
向いている職種|動画編集
- やり取り…………★★
- 仕事の量…………★★★
- 突発的な対応……★★★
- 自分のペース……★★
動画編集の仕事は、映像の素材を切り張りしてまとめたり、BGMや効果音・テロップなどを付けたりします。制作会社で働くほか、フリーランスでも活躍可能です。
地道な作業が多く、細かい作業が苦手でない人に向いています。ニーズも多く、技術があれば安定した仕事量が期待できます。
ただし場合によっては、クライアントやカメラマンなどとコミュニケーションを取る必要も出てきます。締め切りが近い場合は急ぎで対応しなくてはなりません。
向いている職種|職人
- やり取り…………仕事内容による
- 仕事の量…………仕事内容による
- 突発的な対応……仕事内容による
- 自分のペース……仕事内容による
専門的な技術を持っていたり興味のある分野があったりするならば、職人になる方法もあります。職人にはいろいろなジャンルがあり、工事などに関する技術職なども職人に近いと言えるでしょう。
分野を問わず1人での作業も多く、仕事を覚えてしまえば作業に集中しやすいでしょう。造園業などは人とのやり取りが少なくて済むほか、一般に環境も静かです。落ち着いて働くことができます。
ただし技術を身につけるところから始める場合、先輩や師匠から教えてもらうためにコミュニケーションを取ったり相手の言いたいことを察したりすることが求められます。そのほか自営として働く場合は、営業力が必要となる場合もあります。
向いている職種|ポスティング
- やり取り…………★★★
- 仕事の量…………★★★
- 突発的な対応……★★★
- 自分のペース……★★★
ポスティングは、指定されたエリアの各家庭にチラシや広告を投函する仕事です。基本的に1人行動で、コミュニケーションもほぼ不要です。
時給制/日給制と、出来高制/歩合制の2種に分かれます。出来高制ならプレッシャーも少ないと言えるでしょう。ただし出来高制は1部当たりの単価の地域差も大きく、効率よく稼ぐのはやや難しいかもしれません。また時給制/日給制はノルマが課せられることもあります。
納期や投函の時間帯が指定されている場合もありますが、総じて自由度が高いと言えるでしょう。
向いている職種|警備員
- やり取り…………★★★
- 仕事の量…………★★★
- 突発的な対応……★★★
- 自分のペース……★★
警備員はいろいろな場所の警備を担当する仕事です。場所には、建物や事務所・工事現場・商業施設やイベント会場などがあります。社員・アルバイト両方の求人があるので、好きな方で働くことも可能です。
夜間の警備などはほとんどコミュニケーションが不要ですが、日中のイベント会場や商業施設では来場者に対応しなければならない場合もあります。
仕事自体は定型的なので、何事も起こらなければ淡々とこなせるでしょう。ただし万が一トラブルや事故が発生したときは、突発的な対応やコミュニケーションが求められます。
向いている職種|清掃
- やり取り…………★★★
- 仕事の量…………★★★
- 突発的な対応……★★★
- 自分のペース……★★★
清掃の仕事では、店舗や会社などの清掃を行います。近年は家庭のキッチンや室内の清掃を行う業者も増えています。未経験可の求人も多く、比較的見つけやすい仕事だと言えるでしょう。なお店舗などの場合は、夜間の勤務になることもあります。
店舗・企業向けかつ1人作業であれば、人とのやり取りはほとんど不要です。突発的な対応もほとんどありません。清掃の順序や時間帯が決められている場合もありますが、基本的には自分のペースで働くことが可能です。
ただしホテルなどの場合は、2人組・3人組で作業を行う場合もあります。その場合は最低限のやり取りは必要となります。個人宅向けも同様です。
向いている職種|各種短期・単発のアルバイト
- やり取り…………仕事内容による
- 仕事の量…………仕事内容による
- 突発的な対応……仕事内容による
- 自分のペース……仕事内容による
アルバイトには短期や単発の仕事も多くあり、中には働きやすい仕事もあります。交通量調査や看板持ちなどはとくに人とのやり取りが少なくて済む仕事です。
お中元・お歳暮関連など繁忙期だけの期間限定の仕事から、イベントスタッフ・試食販売などまで種類は様々です。工場や倉庫などの軽作業もあります。なお派遣会社を介した30日未満の日雇い派遣は、いくつかの条件を満たさない限り禁止されています。注意が必要です。
覚えることが少ないこと、自分の都合に合わせて働けることが単発の仕事のメリットです。ただし安定的に働くことが難しい場合もあります。
向いている職種|工場・倉庫の軽作業
- やり取り…………★★★
- 仕事の量…………★★
- 突発的な対応……★★★
- 自分のペース……★★
工場や倉庫内の軽作業も社会不安障害の人に向いています。具体的には、組立、シール貼り、盛り付け(食品関係)、梱包、ピッキング(必要な商品を集めてくる)などがあります。
単純作業がほとんどで、集中しやすく働きやすいでしょう。突発的な仕事量の増減はあまりありませんが、時期などによる変化があるケースもあります。ただし事前に予想しやすいとも言えます。
また作業は単純でもこなすべき量が多いのが一般的で、スピードが重視される傾向があります。ライン作業の場合はその傾向が強く、前後の工程の人とやり取りが必要になることもあります。
向いている職種|新聞配達
- やり取り…………★★★
- 仕事の量…………★★★
- 突発的な対応……★★★
- 自分のペース……★★
新聞配達は、指定されたコースを回って時間内に新聞を配達する仕事です。早朝の仕事なので、早起きが苦手ではない人向きです。
配達はほとんど人と接触せずに済みます。また仕事量についても、突発的な増減がなく安定しています。時間を守ることは求められますが、働きやすい仕事だと言えるでしょう。
ただし営業所によっては、集金や営業も兼任する場合があります。その場合は人とのやり取りが必要となり、営業を兼任した場合は交渉もしなくてはなりません。応募や面接時に確認しましょう。
社会不安障害の人向けの職場環境など
職種が上記に当てはまらなかったとしても、職場環境が整っていれば社会不安障害でも問題なく働くことができます。
まず、通勤のストレスが少なければ仕事そのものが嫌になる可能性が低くなります。電車やバスなど公共交通機関を使わずに済む、通勤距離・通勤時間が短い、交通機関を使う場合も混雑していない、時間帯が自分に合っているなどです。在宅でできる仕事ならそもそも通勤の必要がなく、通勤のストレスもありません。
また、職場の人の理解がある職場も働きやすいでしょう。業務の内容や量を配慮・調整してくれたり、不調時に対応してくれたりすれば安心して働けます。
そのほかデスクの位置など、物理的・具体的な環境が整っていて仕事に集中しやすいことも働きやすさにつながります。具体的には、周囲の視線が気にならない、話し声が聞こえないなどが挙げられます。
社会不安障害の人向けの雇用形態
学生であればアルバイトが基本となりますが、学生以外の場合も一般雇用の正社員にこだわらない方がよいでしょう。
たとえばアルバイトなら単発の仕事もあり、働きたいときに働けます。責任が少なく自由度も高いでしょう。ただし収入・福利厚生など正社員より落ちる面もあります。
雇用されずにフリーランスで働くという選択肢もあります。仕事の段取りを自分で決めることができるので、ペース配分が自由です。なお仕事を取るための苦労がある点と自己管理が必要な点には注意が必要です。
正確には雇用形態ではありませんが、在宅ワーク・リモートワークも働きやすいでしょう。職場に出勤する必要がないので、通勤ストレスや多くの対人ストレスを感じずに済みます。
そして障害者雇用という選択肢もあります。社会不安障害は、症状によっては障害者手帳の取得も可能です。障害者雇用なら、周囲も障害を理解しているだけでなく働くための仕組みや環境が整っています。続けやすさはほかの形態より段違いに高いと言えます。ただし収入面では物足りない場合もある点だけは理解が必要です。
長続きさせるために自分でできる工夫
仕事を長続きさせるためには、自分でできる工夫や努力もあります。
まずは、給与など待遇よりも働きやすい環境かどうかで仕事を選ぶことが大切です。待遇にこだわるのは自分の状態がよくなってからにしましょう。
また、勤務先や上司に障害を伝えることも働きやすさにつながります。勇気がいるかもしれませんが、配慮してもらえるようになります。
さらに、規則正しく健康的な生活を送る事も大切です。食事や就寝・起床のリズムを整えましょう。体調に影響します。
メンタルに関わるポイントとしては、自分なりのリフレッシュの方法を作っておくこと、時間帯・交通機関など通勤のストレスを減らすことが挙げられます。
そして、障害者雇用も選択肢に入れることです。とくになかなか仕事が決まらない人・決まっても同じ職場で続かない人は検討することをおすすめします。続けるための環境が整っており、職場の人も経験の蓄積や対応の知識があるからです。
まとめ
社会不安障害の人に限った話ではありませんが、完璧な職場はないものです。そのため、完璧でなくても自分に合ったところを見つけることが大切になります。条件の優先順位を決めて探せば、自分にとって続けやすい仕事や職場はあります。
働きやすい環境という点では、障害者雇用がおすすめです。正社員だけでなくアルバイトにも障害者雇用があります。仕事探しで苦労している人は、障害者手帳を取得して障害者雇用で働くことを検討してみてください。