発達障害(ASD・ADHD)でWebデザイナーを目指すには?【必須スキルと学習法まとめ】
発達障害(ASD・ADHD)の人は、Web系のクリエイティブな仕事に向いていると聞くことがよくあります。それは一体本当なのでしょうか?
この記事では、Web系のクリエイティブ職の中からWebデザイナーに絞って適性などを解説します。発達障害の人に向いているかどうか、また発達障害の人がWebデザイナーを目指すために必要となるスキルやその学習法についてです。発達障害でWebデザイナーになろうか気になっている人はぜひ参考にしてみてください。
向いている人も向いていない人もいる
発達障害でクリエイティブ系に向いている人が比較的多いのは事実です。中でも、とくにWebデザインは向いていると言えます。ただし向いている人とそうでない人がいるのもまた事実です。向き・不向きをまとめると次のようになります。
- 向いている人…創意工夫するのが好き、PCやインターネットが好き、新しいもの・技術に興味がある
- 向いていない人…インターネットに興味がない、新しい技術に興味がない、デザインに興味がない
ただしWebデザインに向いていてデザインのセンスがあったとしても、ほとんどの場合コミュニケーションで苦労します。そのため、Webデザインで生活できるようになるのは簡単ではないことは心得ておきましょう。
Webデザイナーの仕事とは
発達障害の人がどうやってWebデザイナーを目指すかの解説をする前に、そもそもWebデザイナーはどのような仕事をする人なのか確認しておきましょう。
Webデザイナーとは、Webサイトのデザインを行う人のことを言います。クライアントの要望を満たすデザインのアイディアを出して、それを実際のサイトにしていくのが仕事です。オーダーに合わせてデザインと構成を提案し、プログラミング(コーディング)を行います。
おおまかな仕事の流れは、注文内容のヒアリング→デザイン→プログラミング(コーディング)です。要所要所で自社の中やクライアントとの間で確認することも多くあります。
ほかのWeb系の仕事と比べると?
Web系の仕事には、デザイナーのほかにもマーケターやディレクター・プロデューサーなどがあります。これらは多くの専門知識やコミュニケーション力が必要で、Webデザイナーはそれよりは目指しやすいと言えます。
そのほかWeb系ではWebライターも目指しやすい仕事ですが、文章を扱うので視覚的なデザインに携わるデザイナーとはジャンルが異なります。ライターの場合、誤字脱字がないかチェックできる注意深さや一定の国語力が求められます。
もしも数字に自信があるなら、Google広告やSNS広告などの広告運用を学ぶのもよいでしょう。Web広告業界(Webマーケティング業界)の市場は伸び続けており、サービス内容についても進化が著しい分野です。
ほかのデザイナー・クリエイティブ系の仕事と比べると?
Webデザイナーは、イラストレーターやグラフィックデザインより求人も仕事も多く、将来性や安定性があると言えるでしょう。仮に職場と相性がよくなかったとしても、比較的楽に転職先を見つけることができます。
ゲーム業界も将来性があり、人気です。Webの業界のように、プログラマーやディレクター・プランナー・プロデューサーなどの仕事があります。しかし就労移行支援など障害のある人向けの場所でゲーム業界のための知識やスキルを学べる機会は少ないのが実情です。
Webデザイナーの仕事環境
Webデザイナーを仕事にする場合、企業に就職する方法とフリーランスになる方法とがあります。企業に就職する場合の勤務先企業としては、以下のようなパターンがあります。
▼ おすすめ順
① 一般企業のWeb担当(インハウス)
② グラフィック・紙媒体専門の制作会社
③ Google広告やSNS広告などの広告運用会社(Web広告代理店)
④ ECサイトのコンサル/制作会社
⑤ Web制作会社
企業によりけりなので一概にどのパターンがよいとも言えませんが、この中では、①一般企業のWeb担当(インハウス)がもっともおすすめできると言えます。理由としては、他社(クライアント)のWeb制作を請け負う①~④に比べて、自社のWeb制作や運用/管理に関する仕事なので自分のペースでこなせる環境を作りやすいからです。
雇用形態には、正社員とパート・アルバイトのほか、障害者雇用の求人もあります。ただし数はあまり多くありません。企業の場合はチーム単位で業務にあたるのが一般的で、コミュニケーションの頻度も高くなります。なお企業でも在宅で働けるケースもあります。
おすすめの職場の特徴
発達障害の人がWebデザイナーになる場合、不向きな特性があまり問題にならない場所が働きやすいでしょう。具体的には、1人作業が多い、自分の裁量で進められるような職場です。
Web制作会社などは納期やチェックがきついことが多く、「一般雇用」なら少なくとも経験を積むまでは避けた方が無難です。障害に配慮のある「障害者雇用」なら、Web制作会社であれ何であろうと業種問わずおすすめです。
フリーランスを希望する場合も、いきなりフリーランスになることは難しいでしょう。少なくとも自分の障害について理解してくれるクライアントに出会う必要があります。
なおWeb広告は自社で運用している企業も多くあります。そのため、広告運用を学んだ場合は企業の広告運用担当者としての就職も選択肢にすることができます。
Webデザイナーに必要なスキル
Webデザイナーに必要とされるスキルについて解説します。次の3つが挙げられます。
- PCのスキル
- デザインスキル
- コミュニケーションスキル
1つずつ見ていきましょう。
スキル|PCのスキル
まず1つ目は、PCを使いこなすスキルです。Webデザイナーに必須のPCのスキルは、より具体的には次の2つに分けることができます。
- PhotoshopやIllustratorなどデザイン用のツールを使いこなすスキル
- HTMLやCSSのコーディングスキル、JavaScriptやjQueryのプログラミングスキル
技術やノウハウは日々進化し続けているので、情報を更新することも必要です。新しい情報を学び続ける姿勢も求められます。
スキル|デザインスキル
デザイナーなので当然ですが、デザインのスキルも求められます。ただし自分の好きなように、思い通りにデザインするだけではいけません。次の2点が必要とされます。
- 要望に合わせたテイストのサイトをデザインする引き出しの多さ
- デザインを組み立てる理論の理解とそれを形にできるスキル
クリエイティブな職種というとひらめきが大切のように思われるかもしれません。しかしひらめきを形にしていくには、ロジカルさと地道な作業が必要です。
スキル|コミュニケーションスキル
さらに、コミュニケーションなどのメンタル系のトレーニングを行う必要性は高いと言えます。発達障害の人にとっては負担に感じられるかもしれません。
クライアントのヒアリングのほか社内の進捗の情報共有や確認など、コミュニケーションの必要な場面は多くあります。やり取りは口頭のほかチャットの場合もあり、人によりどちらが得意・不得意かは分かれるでしょう。しかしいずれにも対応できることが求められます。
また、クライアントからデザインに修正が入る場合もあります。そういったときに自己主張するだけでなく、指示を理解しクライアントの意向を汲むことができるかどうかも重要です。自分の意見に固執せず柔軟に対応できることも求められます。
スキルを学べる場所・手段
最後に、上記のスキルを学ぶことができる場所や手段についてまとめます。以下の3つが挙げられます。
- スクール
- Webや本
- 就労移行支援
順に見ていきましょう。
学べる場所・手段|スクール
Web系の仕事に就くためのスクールが多数あるので、その中から自分に合うところを選んで学ぶことができます。現在はオンラインが主流で、動画視聴で学ぶeラーニングのほかツールを使ったマンツーマンのレッスンなどの形があります。
スクールは教材やカリキュラムがよく練られており、短期間で実践的な内容を効率よく学べるのがメリットです。ただし障害への配慮はありません。自分の状態によりますが、その点は注意が必要です。
学べる場所・手段|Webや本
Webや市販の本で独学することもできます。Web上にある無料で受講できるコースのほか、ブログ(コラム記事)やYouTubeなどで公開されているWebデザインの解説などがとても役立ちます。Webのほかの独学の方法としては、市販の教本でしょう。
いずれも解説を読むだけでなく、実際にPCで作業してみながら学ぶのが一般的です。自分のペースで進められますが、自律的に行う必要があります。わからないことは自分でひたすらネット検索で調べるというスタンスが欠かせません。
学べる場所・手段|就労移行支援
就労移行支援などでもWebデザインのスキルや知識を学ぶことができます。事業所でトレーニングやサポートを受けて、一般雇用もしくは障害者雇用で企業に就職するのは有効な手段の1つです。
就労移行支援が唯一の手段というわけではありませんが、障害のある人にとってはコミュニケーションスキルも学べる点が大きなメリットになります。ただしWebデザインのスキルについては、その事業所だけで身に付くまで学べるとは限りません。そのため自己学習でも学ぼうというくらいの意欲のある人でないと難しい面もあります。
就労継続支援B型などの中にはWebデザインを学べる事業所もあり、場合によっては就労移行支援よりも実践的なスキルを習得することが可能です。ただし継続支援はそもそも「学ぶ」ためではなく「働く」ための場なので、一般的に習得のためには移行支援が推奨されています。
まとめ
ASD・ADHDなど発達障害の人にとって、Webデザイナーは適した仕事の1つです。インターネットやPCに興味があり、新しい技術やデザイン自体が好きなら適職になるかもしれません。
ただし人とやり取りをしなくてはならない場面も多いため、コミュニケーションスキルも必要です。就労移行支援ではデザインとコミュニケーション両方のスキルを身につけることができるため、有力な選択肢の1つになると言えるでしょう。