【強迫性障害】仕事が怖い?働けない?転職・就職のための適職探しのポイント
「強迫性障害」はただ神経質なだけと見られることもありますが、日常生活に大きく影響する病気の1つです。WHO(世界保健機関)は「QOL(生活の質)に影響する重大疾病」としているほどです。強迫性障害の状態で仕事を続けてQOLを維持するためには、仕事探しのポイントを押さえる必要があります。
この記事では、強迫性障害の人が新しい仕事を探す際のポイントについてまとめます。強迫性障害で転職や就職を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
強迫性障害とは
強迫性障害とは、不安や不快なイメージが強くなり、それを打ち消そうとして過剰な反応を繰り返してしまう状態をいいます。たとえば、手が汚れているというイメージが強くなり、何度も手を洗ってしまうというのが典型的な例です。
汚れや細菌を過度に恐れる「不潔恐怖」と、人に危害を加えてしまったかもしれない/加えてしまうかもしれないと不安になる「加害恐怖」が代表的な症状です。
強くなってしまう不快なイメージを「強迫観念」、打ち消すための行動を「強迫行動」と呼びます。自分でもおかしい、気にし過ぎという自覚はあるけれどもやめられない、自分の意志に反しているという点が特徴です。
強迫性障害の人の仕事の悩み
現れる症状の内容や程度は人によって異なりますが、仕事上では次のような悩みや症状がよく起こります。
- ミスを恐れるあまり何度も確認をしてしまう
- 確認を繰り返すため作業に時間がかかってしまう
- ものの配置や作業の手順が違うと、不安になって仕事が手につかない
- 人が触ったものが不潔に感じられて触れることができない
- 家の鍵をかけたか不安になり確認に帰ったりして、仕事に遅刻する
- そもそも不特定多数の人がいる場所が精神的に負担で出勤するのが困難になる
また食品を扱う仕事などの場合、問題のあるものを提供してしまったのではないかと不安になってしまう例もあります。
いろいろな形がありますが、不安で仕事がスムーズにこなせなくなったりそもそも出勤することに支障をきたしたりしてしまいます。
強迫性障害の人に向いてる仕事内容の特徴
強迫性障害の人に向いている仕事の内容には、次のような特徴があります。
- 確認が少ない
- 自分のペースでできる
- 不潔恐怖・加害恐怖を感じずに済む
1つずつ解説します。
強迫性障害の人向き仕事内容の特徴|確認が少ない
まず挙げられるのは、確認が少なくて済むという特徴です。定型的な業務で作業内容の変化が少ないと、全体を把握しやすく確認も少なくて済みます。そのほか、確認作業が少なくても問題になりにくいような仕事、責任の重すぎない仕事なども該当します。
逆にお金や個人情報を扱うような仕事は細かい確認が必要となり、強迫性障害の人には不向きと言えるでしょう。
強迫性障害の人向き仕事内容の特徴|自分のペースでできる
個人の作業が多いなど、自分のペースでできるという特徴がある仕事も向いています。ある程度時間に余裕のある仕事やペース配分の裁量がある仕事などです。また他人との関わりが少ない仕事も、仮に不安になったときに時間の融通を利かせやすくなります。
逆にあわただしい作業や作業手順が多い仕事などは、強迫行動が出てしまったときに遅れを取り戻しにくくなってしまいます。そのため強迫性障害の人には不向きだと言えるでしょう。
強迫性障害の人向き仕事内容の特徴|不潔恐怖・加害恐怖を感じずに済む
また不潔恐怖や加害恐怖を感じずに済むということも強迫性障害の人に向く仕事の特徴だと言えます。
不潔恐怖を感じなかったり少なかったりして済む仕事の例としては、オフィス系の屋内での作業、ほかの人と道具を共有しなくて済む仕事などです。さらに在宅ワークであれば不特定多数の人が触れるものや利用する設備を使わなくて済み、さらに仕事に集中しやすくなります。
加害恐怖を感じなくて済む仕事については、人に接する機会が少ないこと、人に直接提供するものと無関係であることなどがより具体的な特徴と言えます。
逆に清掃や屋外での作業、汚れを伴う作業が多い仕事は不潔恐怖に、また運転の必要がある仕事や飲食物に関わる仕事などは加害恐怖に向きません。
強迫性障害の人に向いている職場環境の特徴
強迫性障害の人に向いている職場の環境としては、次のような特徴があるところだと言うことができます。
- 障害への理解がある
- 在宅ワークなど、人との関わりが少ない
- 障害者雇用・特例子会社
1つずつ確認していきましょう。
強迫性障害の人向き職場環境の特徴|障害への理解がある
まず、障害への理解がある職場は強迫性障害の人も安心して働けます。不安を感じずに済んだり、仮に不安を感じたときにも対処しやすくなったりするからです。
より具体的には、上司や同僚が配慮してくれること、相談窓口があって不安やストレスを感じたとき相談できることなどが挙げられます。あるいは業務のペース配分などを本人に任せている場合も安心度が増すでしょう。
強迫性障害の人向き職場環境の特徴|在宅ワークなど、人との関わりが少ない
人との関わりが少ない職場も適しています。人との関わりが少ないと不安要素も少なくなるからです。他人の影響を受けることが少なくなり、自分がコントロールできる範囲が広くなります。その結果、衛生面の不安や加害恐怖に気持ちを奪われずに済み、自分のペースも守りやすくなります。
とくに在宅ワークはおすすめです。出勤途中の不安も感じずに済み、突発的なトラブルの種をさらに少なくすることができます。
強迫性障害の人向き職場環境の特徴|障害者雇用・特例子会社
障害があることを前提に雇用される障害者雇用や特例子会社は、いろいろな面で配慮が受けられます。障害者雇用は、一般企業が障害者向けに用意した枠で採用されることです。特例子会社は、一般企業が障害者雇用を促進するために設立する子会社のことです。
障害者雇用や特例子会社でなく一般の就労だったとしても、会社には障害についてあらかじめ伝えることが望ましいと言えます。長く働くためには病気について隠さず伝えるべきでしょう。得られる配慮がまったく異なるからです。
強迫性障害の人に向いてる職種
より具体的に、強迫性障害の人に向いている職種としては次の例が挙げられます。ただし人により症状が違ったり得意/不得意な作業は異なります。あくまで一般的な例だとお考え下さい。
- 事務職
- デザイナー・ライターなど
- 軽作業
それでは、1つずつ解説していきましょう。
強迫性障害の人向き職種|事務職
まず1つ目は事務職です。書類の作成や整理などオフィスワーク全般を行います。コンピュータの基本操作が必須です。
自分のペースでできる、不潔恐怖を感じずに済む、ミスのリカバーがしやすい点が強迫性障害の人に向いています。
ただし経理・労務・人事などお金や個人情報が関わる事務は、責任が増し確認も増えるので注意が必要です。そのほか来客の応対や電話対応をしなくても済む方が、自分のペースを保つことができてより安心です。
強迫性障害の人向き職種|デザイナー・ライターなど
デザイナーやライターなどの仕事も強迫性障害の人に適しています。
デザイナーは、オーダーに合わせてコンピュータでウェブサイトやチラシなどのデザインをします。ライターは、与えられたテーマや内容について調べて主にウェブ向けの記事にまとめるのが仕事です。
どちらも一人の作業が多く、ほかの人との関わりが少なくて済みます。また仕事にも集中しやすく、強迫観念に左右されにくくなります。在宅でできるケースが多いのも強迫性障害向きのポイントです。
一定のスキルや国語力が必要ですが、スキルを習得できる就労移行支援の施設もあります。
強迫性障害の人向き職種|軽作業
軽作業も強迫性障害の人に向いています。軽作業にはさまざまな種類がありますが、具体的には工場での組立作業、倉庫での梱包やピッキング、スーパーマーケットのバックヤード作業などが挙げられます。
自分のペースでできる、ミスのリカバーがしやすい、不潔恐怖を感じずに済むなどの点がメリットです。なお、いずれも多少体を動かす仕事です。扱う製品によっては体力が必要な場合もあります。たとえばケース入りの飲料水を扱う場合などです。
強迫性障害の就職・転職に活用できるサポート
強迫性障害の人が就職・転職する場合、活用できるサポートがあります。ここでは次の3つについて解説します。
- ハローワーク
- 障害者向け求人サイトなど
- 就労移行支援
1つずつ見ていきましょう。
強迫性障害の就職・転職向けサポート|ハローワーク
まずハローワークです。仕事探しに役立つ公共機関ですが、障害者の仕事探しにも大きな助けとなります。障害のある人が求人を探すときの定番だと言えるでしょう。
障害者向けの窓口があったり、専門知識のある支援員がいたりします。求人の紹介のほか、書類添削、面接練習、セミナーの案内、合同面接会の開催などを行っています。
いったん近隣のハローワークに出向いて登録すれば、自宅でも求人をチェックすることも可能です。ぜひ登録しましょう。
強迫性障害の就職・転職向けサポート|障害者向け求人サイトなど
インターネットを利用した障害者向けの求人サイトやエージェントも存在しています。
求人サイトでは、障害者が対象の求人をチェックして応募できます。さまざまなサイトが開かれており、得意分野がある場合もあります。いずれも無料で利用することが可能です。
エージェントも多く存在しており、障害者向けの職場を紹介してもらえるサービスです。エージェントも無料です。
いずれもハローワークより案件が少ないですが、合同面談会や非公開求人などメリットも多くあります。併用するのがおすすめです。
強迫性障害の就職・転職向けサポート|就労移行支援
就労移行支援は、障害者が一定期間通所して対人スキルや就労に役立つスキルを身に付けたり指導や実習を受けられるサービスです。名前の通り、就労の難しい状態から就労できる状態に改善していくのに役立ちます。そのほか、就労移行支援のネットワークを通して紹介を受けられる仕事もあります。
利用するには料金が必要ですが、使用料の1割負担で利用することができます。また前年度の世帯所得で金額が決まるので、無料で利用できるケースも多くあります。
強迫性障害のおすすめの就職・転職に至る流れ
強迫性障害の人が就職・転職する場合、次の流れにのっとってステップアップしていくのがおすすめです。
- アルバイトでスタート
- 就労移行支援・就労継続支援などを活用
- 就職
なお、体調を整えたり治療を受けたりするのが大前提です。1つずつ解説していきます。
強迫性障害の就職・転職の流れ①アルバイトでスタート
まずは短い時間や少ない日数でも勤務できるアルバイトから始めましょう。1日単位で完結する日雇いのアルバイトもおすすめです。
正社員ではなく責任も少ないため、ハードルが低くて済みます。仕事や職場の人間関係づくりに慣れていきましょう。場合によっては、外出すること・出勤すること自体の練習にもなります。
強迫性障害の就職・転職の流れ②就労移行支援・就労継続支援などを活用
働くことに慣れてきたら、就労移行支援や就労継続支援などを活用しましょう。
就労継続支援は、障害のある人の就労の場として活用できる障害福祉サービスです。A型・B型に分類され、それぞれ多少違いがあります。希望のほかアセスメントを通してどこを利用するか決定されますが、とくにA型は一般就労へのステップとしても活用できます。
就労移行支援は、すでに述べたように就職に向けたスキルを習得する施設です。スキルアップに役立つのはもちろん、仕事探しの支援も受けられます。
強迫性障害の就職・転職の流れ③就職
出勤や仕事に慣れて対人スキルも高まってきたらいよいよ就職を目指しましょう。
一般就労、障害者雇用、特例子会社などの選択肢、さらに業種や職種も考えながら自分に合った仕事を探します。就職はゴールではなくスタートであり、長く勤めることを前提に探さなくてはなりません。長く勤められる職場を見つけるため、さらに見つかったらそこで続けるために、必要な工夫と努力を怠らないようにしましょう。
そして状態によっては、オープン就労から始めてクローズの一般就労を目指すことも可能です。状態の変化に従って、希望に近い仕事にステップアップしていきましょう。
まとめ
強迫性障害は日常生活を送るのにも支障がある病気です。しかし治療を続ければ、快方に向かい働けるようになることも夢ではありません。仕事選びのポイントを押さえれば、働き続けることもじゅうぶん可能です。
状態の変化・改善に合わせて、自分に合った仕事を探して自分のペースで進んでいきましょう。働くことを通じてできることを増やしていければ、さらなるステップアップも可能です。ぜひこの記事を参考に、社会にコミットできる面を増やしていってください。