パニック障害の人に向いているおすすめの仕事とは?就職を成功させる基本情報を解説
パニック障害は100人に1~3人ぐらいの確率で発症するとされ、決して珍しい病気ではありません。そのため、パニック障害で仕事の悩みを抱えている人も数多くいます。しかし就職や転職をあきらめる必要はまったくありません。
この記事では、パニック障害の人におすすめの仕事の特徴や内容、続けるための工夫、仕事を探すときの基礎知識など、パニック障害の人が新しく仕事を見つけるときに役立つ情報をまとめました。ぜひお読みください。
パニック障害から転職する前にするべきこと
パニック障害の人が転職活動をする際に、あらかじめしておくべきことがいくつかあります。まず第一に、できるだけ休んでしっかり治療することが挙げられます。
休職してじっくり休養を取れば完治あるいは改善することも可能です。
しかしせっかく休職してもお金や生活のことが不安になってしまい、アルバイトをしたり職場復帰や転職をしたりしようとする傾向があります。それはあまり好ましくありません。
症状の重度に関わらず、最善の選択肢は休養に専念して完治もしくは改善させることです。仕事を探すのはできれば症状が改善してからにしましょう。
少なくとも医者から仕事を再開していいという許可を得ることが必要です。自分だけの判断は避けましょう。
パニック障害の人におすすめの業務内容の特徴
仕事の業務内容について、どんな特徴があるとパニック障害の人に向いているのかまとめます。以下の3点が挙げられます。
- ノルマ・プレッシャーが少ない
- 作業などが定型的
- 他者とのやり取りが少ない
1つずつ見ていきましょう。
特徴|ノルマ・プレッシャーが少ない
パニック障害の人には、ノルマやプレッシャーが少ない、あるいはない仕事が適しています。ノルマやプレッシャーがなければ自分のペースで進めることができ、安心して働くことができるからです。
逆に、ストレスやプレッシャーがある営業職などの仕事は発作の原因になる可能性があります。また車の運転など、突然発作が来た時の危険度が高い業務も避けましょう。事故のリスクを減らすだけでなく、対処しにくいときに発作を起こすのではないかという不安もなくすことができます。
特徴|作業などが定型的
業務の内容がある程度決まっていて、臨機応変な対応が不要という仕事もパニック障害の人向けです。不測のことが起こりにくく、仕事の進め方や自分の状態もコントロールしやすいため安心感もあるからです。
逆に何が起こるかわからない状態でさまざまなことに対処しなければならないと、落ち着けずストレスになってしまいます。ストレスが間接的な原因となって発作を誘発する可能性があります。
特徴|他者とのやり取りが少ない
そのほかパニック障害の人に向く仕事の特徴としては、他者とのやり取りが少ないことが挙げられます。一人でできる作業なら、自分のペースで進めることができます。
逆に営業や接客などは、応対・接客中に発作が来ると逃げ場所がありません。不安や恐怖心を感じながら働かざるを得ず、パニック障害の人にとっては負担が大きくなってしまいます。避けた方がよいでしょう。
パニック障害の人におすすめの職種
次に、パニック障害の人におすすめの職種の具体例を紹介します。以下の仕事が挙げられます。
- 事務職
- 軽作業など
- Web関連
これらはいずれも、先に述べた特徴を備えた仕事だと言えます。1つずつ見ていきましょう。
おすすめの職種|事務職
まずパニック障害の人におすすめの仕事は事務職です。とくに書類作成やデータ入力メインの事務なら定型的で、より不安なく働くことができるでしょう。電話や来客の応対がなければ他者とのやり取りも不要です。ただしコンピューターの基本操作は必須です。
事務職は一般的にノルマもないので自分のペースで進めやすいのですが、経理事務の給与の計算や処理など締め切りがある場合もあります。また企業の規模によっては事務仕事以外も頼まれたりする可能性もあります。
おすすめの職種|軽作業など
軽作業もパニック障害の人向きで、コンピューターを扱うのが苦手ならチャレンジしやすい選択肢となります。具体的には、工場での組立作業、物流倉庫での梱包やピッキング、スーパーマーケットのバックヤード作業などがあります。どれも多少体を動かしますが、特別な資格や専門知識は不要です。
軽作業も業務が定型的で、周りとのやり取りも少ないのが一般的です。業務内容にもよりますが、自分のペースでできるのも魅力です。
おすすめの職種|Web関連
クリエイティブなことに興味があったり得意だったりするなら、Web関連の仕事にもパニック障害の人向けのものがあります。具体的には、WebデザイナーやDTPデザイナー、ライターなどです。一定のスキルが必要ですが、就労移行支援などでスキルを習得できる場合もあります。
作業は意外に定型的ですし、1人での作業も多くほかの人とのやり取りが少ない点が向いています。フリーランスなど出勤せず在宅でできる場合も多くあります。ただし締め切りや納期があるのが普通なので、それに間に合わせなくてはなりません。
職種以外のポイント
職場環境などの仕事内容以外の面について、パニック障害に向く職場の特徴をまとめます。次の特徴が挙げられます。
- 長時間労働を避けられる
- 通勤時間が短い、不要
- 通退勤のラッシュを避けられる
1つずつ見ていきます。
ポイント|長時間労働を避けられる
長時間労働をしなくて済む職場はパニック障害の人は働きやすいと言えます。アルバイトやパートなどの雇用形態は労働時間の融通が利くので、良いでしょう。正社員や契約社員の場合は、残業がない/少ない職場が理想的です。
長時間労働は、パニック障害を引き起こすと考えられている疲労や睡眠不足・ストレスの原因になります。長時間労働を避けられれば、パニック障害の遠因を遠ざけることが可能です。また拘束時間が長いと、それだけ勤務中に発作が起こる可能性も高まるでしょう。そのリスクも低減できます。
ポイント|通勤時間が短い、不要
また通勤時間が短い、あるいは通勤すること自体不要な職場・仕事もパニック障害の人にとって働きやすいでしょう。通勤中の電車やバスの中で不安になるケースが多いからです。
交通機関に乗っている時間が短い、あるいは自転車や徒歩で通えるような職場なら不安を感じずに済みます。リモートワークで働ける会社、あるいはフリーランスなど、そもそも出勤の必要がないような職場や仕事ももちろんぴったりです。
ポイント|通退勤のラッシュを避けられる
通退勤のラッシュを避けられるというのもパニック障害の人に適している職場の特徴です。パニック障害の場合人混みに恐怖や不安を感じるケースが多く、人が少ない時間に出勤できれば不安も少なくなるからです。
正社員や契約社員ならフレックス制を導入しているかどうかチェックしましょう。そのほかパートやアルバイトの形で、出勤時間を混む時間帯からずらすという方法もあります。
できれば職場の理解・協力を仰ごう
会社にはパニック障害のことを伝えておくことが望ましいと言えます。勤務中に発作があった場合など、驚かれずに適切に対応してもらえるからです。そのほか職場環境や業務内容への配慮も受けられます。服薬や通院が必要な場合にも配慮してもらえるでしょう。
伝えると採用してもらえないのでは?と心配になるかもしれません。しかし仮に黙って採用されたとしても、そこが仕事を続けられない環境だった場合どうでしょうか?就職をゴールとせず続けることを優先して考えるなら、むしろ障害を伝えてふるいにかけるぐらいの気持ちでいましょう。
パニック障害のことを黙っていて業務に支障をきたす場合、就業規則の内容によっては解雇となる可能性もあります。長い目で見れば、お互いが納得できる職場を探す方が得策でしょう。
パニック障害で仕事を続けるための工夫
次に、パニック障害の治療をしながら仕事を続けるための工夫についてまとめます。次の3点が挙げられます。
- 自分なりのリラックス方法を実践する
- 規則正しい生活を送る
- 無理をしなくて済む雇用形態などを選ぶ
初めに述べた通り、完治もしくは改善してから働くのが理想です。しかし何らかの事情で、症状が改善していなくとも働く必要がある方は、これらの工夫を行いましょう。1つずつ見ていきます。
工夫|自分なりのリラックス方法を実践する
まず、自分なりにリラックスできる方法を見つけて、それを実践しましょう。リラックス方法は、仕事中にできること、ふだんからストレス発散・精神安定のためにできることに分けられます。それぞれいくつかずつ、自分にとって効果のある方法を見つけておきましょう。
仕事中にもできることの例としては、ストレッチや休憩時間の気分転換(外に出る、音楽を聴くなど)などが挙げられます。リラックス方法からはやや外れますが、デスクの位置など仕事の環境を整えるのも不安感を減らすのに有効です。
普段のストレス発散やリラックス方法としては、適度な運動、ゆっくり入浴すること、趣味に没頭することなどがあります。休養に専念している間も、日常生活でリラックスできる方法を持っておくと気持ちの安定に役立ちます。
工夫|規則正しい生活を送る
規則正しい生活を送ることも大切です。まずはじゅうぶん睡眠をとりましょう。起床・就寝の時間を一定にすることも心がけます。寝不足の原因となるので、就寝前のネット視聴なども控えましょう。
そのほか食事の回数や時間帯を守ったり、栄養バランスなどにも気を使ったりすることも必要です。アルコール、カフェインなどを控えた方がよいでしょう。
睡眠・食事、さらに適度な運動を組み合わせると、よりメンタルも安定しやすくなります。
工夫|無理をしなくて済む雇用形態などを選ぶ
また、無理をしなくても済むように雇用形態などもよく検討しましょう。いきなり正社員を目指すよりは、パートやアルバイトから始めることが現実的です。
パートやアルバイトなら、1日の勤務時間が短い、出勤日数が少ない、短期間で終わるなど、自分に合った形で無理せず働くことができます。出勤や退勤の時間の融通もきき、混雑する時間帯を避けることも可能です。治療と並行の場合も都合を合わせやすいでしょう。
またパートやアルバイトなら正社員ほど強く拘束されることがないので、勤務を体調に合わせやすい、体調を整えやすいというメリットもあります。フリーランスもスケジュールなど調整しやすいので、独立できるスキルがあれば検討してみましょう。
パニック障害で就職するときの基礎知識
パニック障害で就職する場合、知っておくべき基本的なことをざっとまとめます。ここでは以下の3点について解説します。
- オープン就労とクローズ就労
- 一般求人と障害者雇用
- 利用できるサービス・制度など
1つずつ見ていきましょう。
基礎知識|オープン就労とクローズ就労
パニック障害など障害がある人が仕事を探すとき、就労の形に「オープン就労」「クローズ就労」という区別があります。
会社に病気のことを伝えて働くのがオープン就労、伝えずに働くのがクローズ就労です。障害者枠は基本的にオープン就労です。一般求人は、オープン就労・クローズ就労の両方がありえます。しかしすでに述べたように、あらかじめ会社に伝えておくとさまざまな配慮が期待できます。オープン就労の方が安心して働けるでしょう。
基礎知識|一般求人と障害者雇用
上で挙げた「一般求人」と、障害者枠など「障害者雇用」についても確認しておきましょう。障害者以外の人も応募する求人が一般求人、障害者であることを前提に雇用するのが障害者雇用です。
障害者雇用で働く場合は、障害者以外と同じ部署・障害者だけの部署の両方のケースがあります。障害者雇用はさまざまな配慮が受けられる反面、給与などが低い傾向があります。求人が少ないのもデメリットです。
障害のある人だけを雇用する「特例子会社」もあります。特例子会社は環境が整っている反面、障害者枠よりもさらに求人が少なくなります。なお障害者枠と特例子会社のいずれも、障害者手帳が必要です。
基礎知識|利用できるサービス・制度など
パニック障害の人が就職するときに利用できるサービスや制度を簡単に紹介します。
● 一般的な求人サイト:障害者枠を望まない人向け。職種や雇用形態などの選択肢が多く、サポートが受けられるサービスも多数ある。ただし自分で仕事を見つけて応募する必要があるほか、病気を伝えずに就職した場合は配慮が受けられない
● ハローワーク:障害者枠で働きたい人の定番。専門の窓口があったり履歴書の書き方から教えてもらえたりするなど支援も充実している。障害者手帳や医師の診断書・意見書が必要な場合がある(地域によっては必須)
● 障害者専用の求人サイト:合同面談会や説明会を実施しているサービスもあり効率よく応募できる。しかし求人のバリエーションが限定され案件も少ないため、ほかの方法と併用するのがおすすめ
● 障害者向け転職エージェント:エージェントごとに得意ジャンルがあるので、使い分けたり自分に合うところを見つけると心強い。非公開求人を扱っていることもあり、登録の価値がある
● 就労移行支援:障害者が一定期間通所して対人スキルや就労に役立つスキルを身に付けたり指導や実習を受けられるサービス。就労移行支援のネットワークを通して紹介を受けられる仕事もある
自分に合うところを見つけて、いくつか併用するのがおすすめです。なお就労支援など通うことが必要な施設は、通所することが出勤するための練習にもなるというメリットがあります。
まとめ
パニック障害は完治できることもあり、就職して新たなスタートを切ることができます。そのときのためにこの記事の内容をぜひ参考にしてみてください。
ただし焦って無理をしたりせず、できるだけしっかり休養を取って治してから新しい仕事を探しましょう。治療しながら働く場合も気を抜かずに、続けるための工夫を行うことが大切です。